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2022年08月14日(日) 休刊日

東北現場の底力/平川市新本庁舎建設(青森県平川市)/新しい市の象徴整備が佳境/PC化や3Dシミュレーションで効率化

2022.07.08

 青森県の南部に位置し、四方を山々に囲まれ、りんごと米の名産地として有名な平川市。その平川市で、行政や防災、まちの活性化の拠点となる新本庁舎の建設が進められている。三角形のユニークな意匠を実現するため、これまで3Dによる事前の綿密なシミュレーション作業を実施。さらに、免震装置下部基礎にPCを採用することで高品質化と工事の効率化の両立を図るなど、さまざまな創意工夫で施工してきた。現場は最終段階を迎え、外観が姿を現したことで作業にも気合が入っている。「市民と共に、市民が育む、新世代のシティホール」が誕生する日は近い。
 現庁舎は、建設から40年以上が経過し、老朽化に伴い災害時の拠点としての耐震性能を確保できないといった問題を抱えていた。また、同市は2006年1月に2町1村が合併した県内で10番目の新市で、合併以降分庁舎方式で行政事務を行っていた。そのため、地域に分散するまちづくりの活動拠点を統合し、機能集約により市民の利便性向上も図ることを目的に、新本庁舎を建設することとした。設計はNASCA・八洲建築設計事務所・構建築設計事務所JVが担当。清水建設が施工している。
 新本庁舎は、S造4階建て、延べ8120・25平方㍍規模で整備するもので、1階に多目的に利用可能な市民ホールを併設する。特徴的な三角形の構造の建物からは合併した3地域を望み、意匠だけでなく敷地形状を有効的に活用した理にかなった施設となっている。
 内部は、中央に設けられた三角形の吹き抜けが開放的な空間を創出し、機能性と快適さを両立。3階に防災対策拠点を集約したほか、4階の北西コーナーには市民が気軽に利用できるカフェスペースを配置した。周囲の山並みに呼応するファサードを特徴とし、建物内のどこにいても、平川市街が一望できる庁舎となっている。
 また、防災拠点として、高い耐震性や耐久性の確保などを目的に、免震構造を採用。1階の床梁の直下に、地震の揺れを軽減することができるオイルダンパーや免震装置が配置されている。このほか、環境負荷低減に配慮したZEB庁舎を目指すため、地下水を空調熱源や融雪設備に利用するなど、最新技術を多く導入している。
 工事は、一昨年9月に着工。以後、地盤改良、基礎躯体などと順次作業を進めてきた。取材時点の進捗率は97㌫で、最終段階の内装工事や外構工事などを並行して施工していた。
 基礎部分は、テノコラム工法により約880本の柱状の地盤改良工事を行った上で、免震装置下部基礎をPC化し、工事の効率化を図った。
 三角形の3つの角部分や建物中央の吹抜部分は、エントランスホールやカフェスペースなど空間の広がりを持たせるため、トラス構造、片持ち構造を用いており、支保工を配置した上に鉄骨を組み上げた。鉄骨の完成に伴い、支保工を取り除き、無柱空間を創出した。伊藤政利工事長は「構造体が三角形であることから、施工難易度は高かった」と振り返る。
 さらに、新本庁舎は上の階にいくほど、外壁が外にせり出す意匠となるため、斜めに通し柱を設ける構造となっている。建て方の垂直精度や水平精度を確保することが非常に難しく、施工時は同社の技術チームで3Dの図面を作成し、建て方のシミュレーションを行いながら作業した。その結果、「品質や安全面の確保だけでなく、工事の効率化にもつながった」と伊藤工事長は話す。
 伊藤工事長は、「本庁舎が市民の皆さんにとって、集まりの場や中心の拠点として受け入れてもらえるよう、最後まで尽力したい」と決意を語った。