ユアテック/小林郁見社長に聞く/新たな成長分野に挑戦/期待の「人的資本」を育成
4月にユアテック取締役社長社長執行役員に就任した小林郁見氏が5日、仙台市の同社本社で就任会見を開いた。決算が4期連続の増収となった会社を率いたことに身を正し、今後の成長分野への挑戦など経営方針を語った。社員を「人的資本」と重視し、育成に努めていく考えを示した。
――就任に当たっての抱負は。
小林 前任の太田良治社長から、2代続けて当社出身者が社長に就いた。重責を感じ、身の引き締まる思いだ。社員への指示についても、トップダウンで指示するもの、ボトムアップで挙げられたものを判断して指示するものなど、社長ならでは視点の大切さを実感している。
当社の長期目標「2030ビジョン」の達成に向けて「既存事業の進化と成長分野の拡大」「サスティナビリティ経営の推進」「次代を作る人財への投資」を展開している。昨年は創業80周年を迎えたので、さらに100年企業を目指し、株主や顧客との信頼関係を深めて収益拡大を図っていきたい。
――設備工事の景況はどうか。
小林 4月末に発表した前年度決算は、売上高が過去最高水準の増収増益となった。仕事量も潤沢にあり、今は追い風が吹いている。一般工事では公共および民間の投資が堅調で、東北地方と新潟県での屋内配線・空調管工事では大型工場や大型商業施設の受注が拡大している。そのほかの地域では、関東圏でデータセンター工事など新規の成長分野で需要が見込めるので対応していきたい。
電力インフラ設備工事では、災害に強い送配電設備の構築に向けて高経年化対策工事が底堅く推移している。カーボンニュートラルへの対応を見据えて再生可能エネルギー施設の工事が本格化してくるので、早期に施工体制を構築して臨みたい。
――事業展開の見通しについて。
小林 ベトナムを拠点とする連結子会社のシグマエンジニアリングJSCでは、大型ホテルや複合ビル、工場などの設備工事を受注しているほか、政府開発援助に関連する工事を年23件受注した。送配電網の整備など、当社のノウハウを活かせるマーケットなので積極的に挑みたい。再エネ事業については、風況が良い東北各地で風力発電所の建設が盛んに計画されている。情報収集に努め、営業活動を強めていきたい。リニューアル工事については、顧客の保有物件を時間軸で管理し、改修時期を的確に捉えて提案していきたい。
――新規分野への参入について。
小林 本業ではないものの、将来を見据えて不動産事業やPFI事業など、建設業とのシナジーが見込める新規分野にも参入したい。仙台市内の再開発事業を含め、当社が保有している営業所の跡地を活用するような検討を進めていきたい。不動産については、リスクも考慮しながら対応することが重要だ。
――働き方改革では「人財」を重視している。
小林 2030ビジョンと中期経営計画では、人的資本の充実を図ることを重視している。人財を確保して育成し、離職を防止することを意識している。学生時代に奨学金を借りた社員のために、代理返還支援制度を設けた。一度退職した方を再雇用する「ジョブリターン制度」についても、要件を緩和した。社員のモチベーションを高く保つために、役割と成果に見合った評価、貢献度を処遇改善に反映していく。
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こばやし・いくみ 1959年1月、仙台市出身の66歳。東北学院大学工学部を81年3月に卒業し、ユアテックの前身・東北電気工事に入社。2019年6月に取締役常務執行役員、22年6月に取締役副社長執行役員に就任し、ことし4月から現職。趣味は花木や観葉植物の手入れ。