メニュー
2025年12月18日(木) 発刊日

日建連東北/25年度活動報告会/高齢化、人手不足止まらず/9委員会が現場実態を説明

2025.12.10

 日本建設業連合会東北支部(大橋成基支部長)は8日、2025年度の活動報告会を仙台市の江陽グランドホテルで開いた。支部内に設置された9つの委員会が、本年度に実施した事業内容やアンケート結果などを報告した。現場の実態に関する報告では、技能者の高齢化に歯止めが掛からず、さらに人数が減少して人手を確保することが難しい現状が伝えられた。

 あいさつした大橋支部長は、この日の報告に向けて資料をまとめた委員らに労いの言葉を送りながら「委員会活動は、現場の意思や各社の意思を吸い上げ、それらの意見を支部の総意として発注者に伝えることにつながる」と述べた。日建連が情報提供する資料は発注者側も貴重な資料として使用しており、大橋支部長はそのことを伝えながら「今日の報告会でも、各委員会がどのような発表を行うのか興味深い」と期待を寄せた。
 東北支部には9つの委員会があり、▽総務・企画▽契約制度研究▽土木技術・積算研究▽調達▽安全環境対策▽広報▽電力工事▽鉄道事業▽建築技術―の順に各委員長らが本年度の活動を報告した。
 建築技術委員会(佐久間弘充委員長)は、生産性の向上について現場の実態を調査し、その結果を報告した。本年度は支部会員のうち、25社とその協力会社319社を対象に▽技能者の確保▽労働時間の見直し▽賃金の改善▽女性の採用▽建設キャリアアップシステムの運用―に関するアンケートを行った。
 24~25年度における東北地区の工事量は、20億円未満の工事が前年同期より減少した一方、20億円以上の工事は横ばいとなっている。専門工事の技能者の確保に関しては、鉄筋工、板金工は応援要請が前年度より減少している。技能者の減少が叫ばれる中、板金工、塗装工以外の職種については応援要請しても集まらない傾向であることが分かった。調査によると、高齢化したベテラン技能者が引退した後に、それを補完する新たな入職者が少ない現状が浮き彫りになった。協力会社の中からも、建設業に対して「休みが少ない」「賃金が安い」「将来的な不安」といった負のイメージが払しょくし切れていないとの声が挙がった。
 それでも、時間外労働の上限規制とともに週休2日の取り組みが進み、4週8閉所した現場の数が増加したことが報告された。また、技能者の賃金形態についても、月給制への見直しが少しずつ進んでいることも報告された。
 総務・企画委員会(鷹野文英委員長)は、発注者と行った意見交換会の開催状況を報告した。10月から東北整備局、東北各県との意見交換会を進め、今後は今月17日に環境省福島地方環境事務所、23日に秋田県と行う方針を伝えた。NEXCO東日本東北支社とも、26年1月26日に開催する予定。自治体との災害協定に関しては、東北整備局と東北各県、仙台市とそれぞれ、包括協定の改定が予定されており、より広域的な災害支援に努めていく。
 安全環境対策委員会(木下真委員長)は就労実態、労働災害に関する調査結果を報告。東北管内における会員企業28社の計119現場では、6月時点で地元技能者の割合が84㌫だった。全職種の年齢構成を見ると、68㌫は40歳以上だった。30歳台は17㌫にとどまり、依然として現場の高齢化が進んでいることが分かった。死傷者数については減少傾向ではあるものの、24年度は56人死傷した。支部として今後、死亡災害につながるリスクの洗い出しと、労災防止対策をさらに推進していく。

◎道路網整備の効果論じる・西村整備局長が講演
 活動報告会に続き、東北地方整備局・西村拓局長の講演が行われた。
 西村局長は、臨時国会に上程した本年度補正予算案の内容や、東北管内の社会資本整備について講演した。国土交通省所管の補正予算案には、豪雨などを踏まえた災害対応費や、クマ対策として実施する河川などの刈り払い費などを計上していると説明。月内の可決成立を目指し、提案理由などを説明していく考えを示した。
 社会資本整備については、東北は国土の18㌫と広大な面積を占める割りに、道路整備が不十分な点を指摘。同局が目指す「4縦貫7横断格子状ネットワーク」の実現によって1時間当たりの移動距離がこれまでより伸びると、物流や観光、地域医療が好転することを紹介した。