メニュー
2025年12月18日(木) 発刊日

建コン協東北/田澤支部長が意見交換会を総括/業務へのスライド条項試行など成果/受発注者共同の取り組み進む

2025.12.15

 建設コンサルタンツ協会東北支部の田澤光治支部長が、東北各県などと実施した本年度の意見交換を総括した。支部長として初年度を終えての率直な感想として「疲れました」と述べつつも、継続的な要望の成果として、建設コンサルタント等業務についてスライド条項の試行が発表されるなど、「要望を継続することの重要性を再認識した」と強調。また、発注者側も人材確保に苦労している実態に触れ、「受発注者共同での取り組みが進んでいる」と評価し、今後も粘り強く要望を続ける姿勢を示した。

―― 意見交換会を終えての感想を。
田澤 先人たちが歩み寄ってきた経緯を理解できた。本年度は秋田県を皮切りに全て対面形式で実施し、真摯に受け答えしていただいた。発注者側も人材確保・育成にかなり苦労されており、受発注者共同での取り組みをしっかり受け止めて対応していただいている。継続して活動していく重要性を認識した。
―― 主な成果としては。
田澤 まず予算の確保については、国土強靱化実施中期計画も含めて確保していくと各発注者が述べたことが大変うれしい。またスライド条項について来年度から試行するという発表が国土交通本省からなされた。仙台市との災害協定締結も11月に完了した。仙台市では合同現地踏査や条件チェックシートの導入など、来年度からの実施時期を明確に示してくれたところは前に進んだと評価している。低入札の抑制対策として青森県は来年7月から業務成績評定平均点の算出方法を見直すなど効果が出ている。
―― 担い手確保に向けた納期の平準化については。
田澤 各県で前倒し発注や予算繰り越しなど平準化の取り組みが進んでいる。東北地方整備局は受注者アンケートや実務者会議などを実施しており、こうした取り組みが他県の事例として広がることに期待している。一方で、3月納期が5割を超える県が多く、依然として年度末に集中している現状がある。
 そんな中で宮城県では契約時にウィークリースタンスなどのチェックシートを使い、ワークライフバランスと工程管理を推進している。これで無理な工期短縮を避けられるため、他県にも活用を提案した。福島県は業務スケジュール管理表の導入を検討中だ。発注者・受注者双方が工程をしっかり管理することで、期限内完了につながる。当初発注だけでなく、工期延伸で3月納期になるケースにも有効と考えている。
―― 技術力による選定については。
田澤 各県とも総合評価などに取り組んでいるが、地元重視の自治体もあり、それぞれの考え方がある。岩手県は総合評価の割合が高かったが、ことしは見直しを行い、一般競争の割合を高く設定した。入札状況の変化を見ていくとしており、協会としても注視していく。仙台市では業務価格の参考見積もりで最低値を使っていたが、来年度から異常値を排除して平均を使うことになった。低入札の抑制対策として、青森県では来年7月以降の入札公告から業務成績評定平均点の算出方法を見直すと話した。そういった情報を各発注者に広報していくことが必要だと思った。
―― 品質確保の取り組みについては。
田澤 条件チェックシートや合同現地踏査、3者協議について必要性は認識されている。一方で、設計不備により工事が止まるという話が出た。協会側もお願いするばかりではなく、BIM/CIMやAI、技術力の向上などで一層の品質確保に取り組む必要がある。協会本部でもチャットボットを開発しており、AI、ICTを活用した品質向上を進めていく。
―― 来年度に向けての意気込みを。
田澤 協会側からの要望だけでなく、発注者側の意見もしっかり受け止めて、受発注者共同でさまざまな課題に取り組んでいきたい。担い手確保について、元参議院議員の佐藤信秋氏が「他業界と争うにはお金と時間だ」と述べていたが、プライベート時間をつくるために協会はしっかり要望していく。少しずつ全てが進んでいかなければならない。今後も粘り強く要望し続けていく。