2025-07-14# 物件(仙台圏)
宮城県/名取市・精神医療Cの建替事業/26年度の基本計画発注目指す/全個室180床、延べ約1.3万㎡を想定
宮城県は10日に「令和7年度宮城県精神保健福祉審議会(第1回)」を開催し、既存施設周辺の名取市内で精神医療センターの建て替え候補地に関して検討内容を報告し、委員らと審議した。年度内に方向性をまとめ、2026年度に基本計画を発注したい考えだ。
県が示した候補地はいずれも県もしくは県立病院機構が有する①現精神医療センター②精神医療センターグラウンド③精神医療センター作業池④現がんセンター⑤旧高等看護学校―の5カ所(図参照)。④については(a)がんセンター閉院後に現駐車場敷地に建築(b)同閉院後に建物を解体し、跡地に建築(c)同閉院後に本館建物を改修し、建物を再利用―の3パターンを想定し、計7プランの概要を報告した。
建て替え検討に係る支援業務は日本経営が進めており、現時点での新病院は全床個室の180床、延べ1万2960平方㍍と延べ432平方㍍の体育館を想定している。
県では建設費が高騰していることを踏まえ、独立行政法人福祉医療機構や一般財団法人建設物価調査会の病院建築の平米単価を参考に総事業費を試算。それによると①が152億5345万2000円②136億3132万4000円③149億4558万4000円④(a)134億3356万8000円(b)137億6356万8000円(c)114億3848万円⑤132億0696万8000円―とした。
また県が提示した事業スケジュールは26年度当初に基本計画を発注し、翌年度には基本設計・実施設計に着手し、29年の第1四半期までに設計業務を完了させたい考えだ。供用開始までの事業期間は5・75年から8・75年を想定している。
出席した委員からは「以前に提案した民有地での検討状況はどうなっているのか」や「早期建設に向けて文化財調査に要する期間の妥当性はあるのか」などの質問が上がり、また「候補地の複合的な利用は可能なのか」といった意見も出た。
審議会を終えた県保健福祉部の遠藤圭副部長は「建設地は確実性の高い県および機構が所有する5カ所で検討を進め、年度内をめどに候補地の選定や病院に求められる機能などの在り方について方向性を決めたい」と述べた。
◎仙台医療圏4病院再編の動向
精神医療センターの建て替えについては、2019年度に初めて在り方検討会議を開催し、以降は仙台医療圏の4病院再編の一環として、県の政策医療の課題解決を目的としていた。
当初は県立がんセンター(名取市)と日本赤十字社の仙台赤十字病院(仙台市太白区)を統合して新病院を名取市に建設するとともに、県立精神医療センター(名取市)と労働者健康安全機構の東北労災病院(仙台市青葉区)はそれぞれ経営主体を維持して富谷市に集約・合築する計画だった。
仙台赤十字病院と県立がんセンターは国道4号沿いの名取市植松入生の敷地4万7781・15平方㍍に移転することが決定した。規模は400床程度、延べ2万8800平方㍍を想定し、建築費は約210億円を見込む。土地は名取市から無償貸与を受ける予定で、新病院の設置と運営は日本赤十字社が担う。
現在、日建設計コンストラクション・マネジメントが統合新病院整備CM業務を受託し、30年度の開院を目指している。
一方の精神医療センターを巡っては、関係者からの意見などを踏まえて度重なる協議を経て、昨年11月に開催した「令和6年度宮城県精神保健福祉審議会」で名取市内での建て替えを求める決議を全会一致で要望し、これらを踏まえて富谷市への移転を断念した。
同じく富谷への集約・合築の計画対象だった東北労災病院も、23年2月20日に県と労災病院の運営母体である労働者健康安全機構で取り交わした「東北労災病院と宮城県立精神医療センターの移転・合築に向けた協議確認書」に基づく協議をことし5月9日をもって解除した。
移転・合築候補地となっていた富谷市は、救急搬送に時間を要する課題があった黒川・富谷を含む県北地域のバランス是正に向けて、民間病院の公募を行っている。
募集概要は24時間救急の受け入れが可能な100床以上の総合病院で、8月19日に候補者を決め、翌20日に公表する見通し。すでに2者からの応募があり、このうち1者は東北医科薬科大学若林病院であることが判明している。