2025-05-01# 物件(大崎・栗原)
東北整備局鳴瀬川総合開発/加美町・鳴瀬川開発の整備状況/迂回路やダムサイト下流工事用道路が本格化/付替国道は各橋梁で詳細設計段階に
加美町で鳴瀬川ダム(仮称)新設などを実施する鳴瀬川総合開発事業に取り組んでいる東北地方整備局は2025年度もダム本体着工に備えて転流工の進捗を図るとともに、関連する道路整備を前進させる。ダムサイトと上流側仮設ヤードの整備に伴う迂回道路の工事が本格化するほか、新たにダムサイトと下流側の残土受入地を結ぶダム工事用道路の整備に着手する。
関連道路の整備は22年6月にダムサイト下流の残土運搬工事用道路から着工した。24年度までに残土受入地(漆沢平)の手前で鳴瀬川と筒砂子川を跨ぐ仮橋の工事が完了。両仮橋の間を通る町道宇津野漆沢線は切り回してボックス化した。今後は鳴瀬川仮橋の左岸側からボックス上部を通り、ダムサイト方面に向かって伸びる工事用道路の改良に取り組んでいく。
今年2月に開札した「漆沢宿尻下流地区工事用道路工事」は橋本店がボックス付近の補強土壁などを施工する。近く「漆沢宿尻上流地区工事用道路工事」を公告予定で補強土壁などを整備する。なお漆沢平はもともと農地でダム完成後に返地するため表土はまとめて取り置いておく。
ダムサイト上流で本体工事の仮設備ヤードとなる平家平地区では、現道の国道347号を北側(左岸側)に切り回すイメージで迂回道路(1工区)を新設。筒砂子川の左支川を跨ぐ仮橋を24・25年度で工事する。2月に開札した「漆沢森下地区迂回路整備工事」は仮橋・仮桟橋を整備する内容で丸か建設が担当する。同じく「漆沢森下地区迂回路道路改良工事」は迂回道路1工区の改良で掘削や法面などを佐藤工務店が施工する。
平家平の南東部で筒砂子川を跨ぐ平家平仮橋は、原石山とダムサイトにアクセスする骨材運搬用工事用道路に設ける構造物で左岸側(平家平側)から着手し1スパンを構築した。仮橋は長さ約90㍍の4スパンでH型鋼の杭を打設し受け桁を組むなどして構築する。2月開札で2スパン以降を施工する「漆沢森下地区工事用道路整備工事」は金原土建が担当。引き続き仮橋を施工する「漆沢森下地区右岸工事用道路整備工事」を近く公告し、両工事をもって対岸までつながる見込み。
平家平の下流でダムサイトの左岸部(北側)には迂回道路(2工区)を整備する。トンネル工事はWTO対象の入札手続き中で7月3日に開札予定。規模は延長439㍍、内空断面積44・5平方㍍。この起点西側(上流側)坑口の工事は昨年度に公告したが成立しておらず、改めて4月25日付で「漆沢筒砂子地区迂回路上流道路整備工事」として公告した。仮橋や掘削などを施工する。同じく「筒砂子地区迂回路下流道路整備工事」で下流側坑口付近の掘削と場所打擁壁も発注する。
おおむね現道の北側(上流の一部は南側)に全長8・7㌔㍍にわたって新設する付替国道は大部分が保安林のため、数ブロックに分けて解除の手続きを進める。保安林ではない下流区間の一部より23年度から着工しており、25年度は12号橋と13号橋の中間付近を改良する「付替国道石坂山地区道路改良工事」を5月に公告予定。付替道路の詳細設計はオリエンタルコンサルタンツがまとめている。今後の改良工事は保安林解除の手続きを経てから複数地点に進入路を設けて展開する考え。付替国道の整備全体に要する土量は切土約120万立方㍍、盛土約80万立方㍍を試算している。
付替道路には橋梁11カ所とトンネル1本を計画。鋼橋の3号橋を除いてPC橋とする方針。近く付替国道1号橋詳細設計を公告し、付替国道の橋梁で最後となる詳細設計段階に入るとともに、付替国道の工事用道路(進入路)の設計を計7㌔㍍ほどまとめる計画。1号橋は予備設計委託時点で橋長約110㍍、3径間程度のPC橋を想定していた。また6号橋については当初、橋長280㍍規模のPC橋として詳細設計をまとめたものの、周囲の山の頂部付近で地すべりのリスクが判明したため影響を考慮するなど橋梁型式や規模の精査に当たる。
転流工はダムサイト左岸(北側)に延長997㍍、内空断面直径4・9㍍の仮排水トンネルを設けるもので、西松建設により400㍍ほど掘削が進んでいる。
また今後、ダム本体の工事に備えて資材運搬車両が加美町の市街地を通過せずに済む道路整備も計画中。検討業務は建設技術研究所が担当する。
なお鳴瀬川総合開発は、加美町漆沢の鳴瀬川水系筒砂子川に治水をはじめとする多目的の鳴瀬川ダムを新設した上で、近接する鳴瀬川にある漆沢ダムを再開発でトンネル洪水吐を改築し治水専用化する。事業費は約1450億円。期間は36年度まで。鳴瀬川ダムは台形CSG型式で堤高107・5㍍、堤頂長358㍍、総貯水容量4560立方㍍の規模。本体詳細設計などは日本工営が担当している。