2025-06-06# 物件(石巻・気仙沼)
宮城県/気仙沼漁港に大水深岸壁を新設/本体工は来年度以降に着手/漁船の大型化に対応、構造は控え矢板式
生鮮カツオを筆頭に全国屈指の水揚げ量を誇る気仙沼漁港で、漁船の大型化に対応するため宮城県が大水深(7・5㍍)岸壁の整備を計画している。地質調査を踏まえて構造を見直し、2030年度の完成を目指す。初弾工事となる海上地盤改良を発注したところで、来年度以降に本体工事を予定する。
気仙沼漁港には2024年度に延べ約3万7000隻の漁船が入港した。しかしカツオやイワシ、サバなどを水揚げする巻き網を行う船は大型化する傾向にあり、既存岸壁では入港が不可能となる懸念があるため大水深岸壁の建設と航路・泊地を増深する必要が生じている。災害時の水産物流通拠点として耐震性も確保する。
建設予定エリアは潮見町地区で、魚市場から南東側(沖側)に続くところ。魚市場前南側岸壁の一部を改良(増深)した上、沖側に岸壁を新設し、沖側の端部には取付護岸を設ける。新設区間の背後は漁港施設用地として埋め立てる。
岸壁の延長は全体で300㍍とし、内訳は既設増深部が71㍍、新設区間が229㍍。取付護岸は延長34㍍。背後の埋立面積は約7600平方㍍。岸壁の前面は約4700平方㍍を航路・泊地として浚渫する。
当初は岸壁構造を桟橋式としていたが、地質調査で液状化層を確認したため設計を変更。海側と背後に鋼管矢板を並行して打ち込む控え矢板式および鋼管矢板と鋼管杭を打ち込む控え杭式に切り替えた。銅管の長さは14㍍~26㍍程度。矢板と矢板の間、矢板と杭の間は中詰材を投入する。矢板などの上部はタイロッドで前後を連結し、コンクリート舗装を行う。
詳細設計はアルファ水工コンサルタンツがまとめている。地質調査はテクノ長谷が担当した。
現在、初弾の地盤改良を小野良組が担当。セメント系固化材による海上地盤改良を実施する。今後も発注見通しによると同様の地盤改良工事2件を予定しているが、発注ロットと時期を見直している状況。
来年度以降に開始する護岸本体工事は新設区間から着手していく計画だ。事業期間は当初、27年度までを想定していたが地盤改良などの影響で30年度に延期した。事業費も試算していた42億円から増額する見込み。
大水深岸壁の整備により大型巻き網船の入港が増えることで水揚げ量や加工場取扱量の増加が見込まれる。そのため気仙沼市主体で荷捌きに対応する市場上屋の増設が検討されている。
市によると詳細を内部で詰めている段階のため、現時点で具体的な整備内容やスケジュールは未定だが、岸壁の整備にめどが立った時点で上屋の工事に着手できるよう準備を進めたい考え。さらに加工場や冷蔵施設といった関連施設の増設にも期待がかかる。