2025-12-25# 物件(大河原)
村田町/民間主体で蔵の町並みを活性化/既存施設生かし〝滞在〟の仕掛け作り/玄関口の道の駅で再レイアウトも
宮城県で唯一、伝統的建造物を保存する「重要伝統的建造物群保存地区」(以下、重伝建)として登録されている村田町は、「道の駅」と「蔵の町並み」を軸とした観光拠点を形成する計画を立てている。地域力創造アドバイザーによる勉強会や複数の民間企業とのサウンディングを実施し、拠点形成に向けて具体化に着手。「見る」蔵から「滞在する」蔵へ、既存施設の改修を含めた仕掛け作りに動き始めた。
人口減少が進む中、交流人口や関係人口の拡大を通じて地域の活力を高めていくため、地域の特性を生かした取り組みを進める指針として策定する地域再生計画のテーマ「蔵の町・道の駅が織りなす環境共生型観光拠点」の構築へ、町では住民が主体のまちづくりに向けた具体的なプロセスに本年度から取り組んでいる。計画エリアは町全体だが、村田ICに近い「道の駅村田」と町道に沿って蔵が連なる「蔵の町並み」を強力に打ち出していく。計画案は年内にまとまる想定で、多様な主体の参画による独自色ある事業を後押しする「新しい地方経済・生活環境創生交付金(第2世代交付金)」の2026年度からの活用に向けた準備を進める。26年度に基本計画などソフト面をまとめ、27年度からハード面に着手する想定だ。
これまでに総務省の地域力創造アドバイザーとして、井上幸一氏(一般社団法人・全国古民家再生協会専門員)を招聘し、月に数回、勉強会などを開催。現在、住民や町内企業など民間主体による組織の発足に向けた検討を進めており、町はその伴走支援に動く。
町道町中央線を中心に東西に沿って広がる重伝建は東西約180㍍、南北約470㍍で面積約7・4㌶の範囲に分布。建築物83件、工作物46件、環境物件1件の計130件が点在し、このうち3つの蔵が町所有で国の重要文化財や町の観光案内所となっている。道の駅から重伝建の蔵の町並みまでは、城山公園口通りの「歴史のゲート」をくぐり車で2分、徒歩11分ほど。
交通環境を見ると、県道岩沼蔵王線・志賀姥ケ懐トンネルの開通で仙台空港方面からのアクセス性が向上したほか、菅生SICや村田JCTなど高速道路利用による動線も確保できており、交通インフラは整っている。しかし、町の担当者は「『景観』『歴史・文化』『アクセス性』というポテンシャルを持っていながらも課題は多い」と語る。
国内外から来訪者がある宮城オルレ・村田コースで町の名所をめぐっても、店が閉まっているため素通りされてしまうケースが多い。町道町中央線が狭く、駐車場が少ないことも通過される理由になっている。現在整備が進む都市計画道路・小池石生線についても町外からのアクセス性が向上する反面、「蔵の町並みを通らなくなってしまうのでは」といった懸念が浮かぶ。
そこで町は、国土交通省主催でまちづくりに関する事業の官民連携を構想するサウンディングに参加。手法としてDBO、BTO、スモールコンセッションを検討する町に対し、コンサル系3社、土木インフラ系1社、金融系1社の計5社が対話。町からの提案に民間側が回答した。
◎空き蔵を滞在型施設に・道の駅は改修
現在の蔵の町並みは宿泊(旅館、民泊)、飲食(イタリアン、ラーメン)、酒蔵、酒屋、菓子屋といった店舗が軒を連ねるが、店が閉まっていることが多いため、蔵の町並みにある空き蔵や空き家をゲストハウス、カフェ、工房、体験施設、飲食施設などに活用したい考え。
ターゲットは宮城オルレ、陶器市に訪れるインバウンドと、国内からはファミリーや若年カップル層を取り込む。サウンディングでは「『歴史のPR施設』『酒造りや染物など非日常体験』『納豆や酒、味噌の発酵文化』といった〝町ならでは〟を活用すべき」という滞在型観光を志向する意見が挙げられた。また歩行者の安全と景観確保に向け、無電柱化やセットバックで道路整備も必要と考えている。
蔵の町並みの整備に併せて、道の駅も改修する。RC造906平方㍍規模の建屋は築約30年が経過しているが大規模修繕は未実施。もともと町が加工品などを扱う物産交流センターとして整備したため、最近の道の駅と比べてレストランや販売所のレイアウトに自由度がないといった課題がある。改修の具体的な時期は未定だが、道の駅はオルレの発着場であるため、再レイアウトなどの改修も行いたい方針だ。
町の財政は町民体育館耐震化や小中学校の統合など支出が嵩む局面を迎えている。担当者は「財政的な面で他事業とのバランスが難しい」と難しさを明かすが、「だからこそ民間参画による資金とノウハウの提供を受けられる民間参画のスキームづくりを重要視している」と話す。


